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研究の書棚のアーカイブ

これからの社会ってどうなっていくんだろう。ぼくたちは、どんな指針をもって生きていけばいいんだろう。
そんなことを考えるときのヒントになるような書籍を並べます。興味のおもむくままなので、トレンド的なものから、社会哲学的なものまで、基本的にノンジャンル。

共同体の基礎理論―自然と人間の基層から―

共同体の基礎理論―自然と人間の基層から (シリーズ 地域の再生)
近代化のなかで「共同体」は解体すべき対象であったという、「まえがき」でも述べられている視座が、本書の確かな土台となっている。

その「共同体」が今、あらためて未来へ向けた可能性として期待されている。この期待を語るとき、ぼくたちは安易に「人間関係(縁)」「思いやりのネットワーク」といった言葉で語ってしまいがちだ。
しかし、そもそもぼくたちはなぜ、「共同体」を解体しようとしたのか。「共同体」の何を乗り越えようとしたのか。本書はそこから語り起こす。そして、「共同体=人間関係」という単純な図からは見えない風景を見せてくれる。その過程が、とてもスリリングだ。
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20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人

20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人楽しく、かつ刺激的な一冊。
ファッション業界に限らず、およそクリエイティブに関わっている人であれば、インスパイアされる箇所が多いことだろう。
あるものごとの歴史を取り上げるにあたって、人に焦点をあてるアプローチがある。このコーナーでとりあげてきた本の中でなら、たとえば『エレクトリックな科学革命―いかにして電気が見出され、現代を拓いたか』がそうだ。
本書も、人に焦点をあてて20世紀ファッションの文化史を物語るが、秀逸なのは、ひとりひとりのデザイナーの、時代における位置づけを明確にしているところだ。彼、あるいは彼女が、どのような時代状況の中で、何に抗い、何に従い、どのような創造を時代に対して加えたか。それぞれの創造のルーツを語っている。 続きを読む

第三の消費文化論―モダンでもポストモダンでもなく

第三の消費文化論―モダンでもポストモダンでもなく (叢書・現代社会のフロンティア) ポストモダン消費論、というのがあった。
1980年代から盛んに言われるようになった。当時日本でもブームになった記号論など、ポストモダン思想の見方を用いて消費を分析する見方だ。
間々田さんは、ポストモダン的文化の内容について、その特徴を次の3点にまとめている。
1.脱合理主義(合理主義的価値観を嫌い、非効率的・非合理的な行為に意味を見出すようになった)
2.脱構造化(人々を拘束していた価値観や規範が流動的になり、境界もあいまいになった)
3.シミュラークルの優越化(創造性やオリジナリティを重視した近代の価値観に反し、模倣や複製化が行われるようになった)
で、80年代以降、消費文化もまた、確かにそうした様相を見せていた。奇妙なネーミングやイメージ広告、過剰な笑いやナンセンスに見られる脱合理的な光景。穴のあいた服やスカートの下のジーンズなどにみられる脱構造化。そしてパロディやシミュラークルの氾濫。
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流線形シンドローム―速度と身体の大衆文化誌

流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌 こういう切り口があったか。みごとな文化論。
流線形、streamline。今でこそ何気なくつかっているこの言葉の誕生と流行を追っている。副題にあるように、もともとは「速度」に関連した物理用語であったものが、身体性を持ち、政治的な力さえ持つようになった。
嚆矢となるのは、1905年に『サイエンティフィック・アメリカン』7月22日号に掲載された「移動時における障害としての空気抵抗」という研究報告だったという。切り裂くような突端ではなく、むしろ進行方向に向けて後部の形状こそ空気抵抗に関係していることを煙流を示して著した論文。
そして1911年、『ポピュラー・メカニクス』9月号に、「自動車に『流線形』ボディ」という記事が掲載される。これが、流線形という用語の初出だ。 続きを読む

学校裏サイト―ケータイ無法地帯から子どもを救う方法

学校裏サイト ある調査によると、SNSなどのコミュニティサイトを利用したことのない保護者が3割という。しかし、出会い系はもちろん、学校裏サイトにしても、今問題になっているケータイサイトの多くは、コミュニティ系だ。保護者と子どもの間には、ネット利用においておおきな断絶がある。
おそらく親にとっては、学校裏サイトを探すことさえ難しいのではないか。子どもに与えたのは携帯電話であって、副題にあるように「ケータイ」であるという認識をしていない親も少なくないかもしれない。
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テレビ番組事始―創生期のテレビ番組25年史

テレビ番組事始―創生期のテレビ番組25年史 副題にあるように、テレビ放送が始まってからの25年間に放送された番組をたどった記録。同時代を生きた著者が、現場の様子を丹念に伝えている。
ひとつひとつの番組の裏舞台で行われていた苦労や、有名番組の思わぬ誕生秘話、配役の移り変わりなど、関係者へのインタビューも交え、生き生きとした様子が甦る。
貴重な記録だ。 続きを読む

今、地方で何が起こっているか―崩壊と再生の現場から

今、地方で何が起こっているのか―崩壊と再生の現場から 朝日新聞紙上での連載をもとにまとめた書籍。
いま、地域を語るときに典型的に語られる二つの町がある。
夕張市と上勝町だ。「崩壊の現場」としての夕張市と、「再生の現場」としての上勝町。
この書籍もまた、ふたつの自治体をつないで語られる。
まずは全体像を振り返っておこう。
切り口は5つ。 続きを読む

構造化するウェブ―ウェブの理想型を実現する技術とは

構造化するウェブ (ブルーバックス) 技術の背後には思想がある。岡嶋さんはそこに立脚している。
個々の技術について解説する書籍は多くある。それら技術が実現する社会について論じた書籍もある。
しかし、それらの間をつなぐ形で描かれる書籍は少ない。一読をお薦めしたい。
副題で触れられている「ウェブの理想型」とは何だろう。
「おわりに」にわかりやすく説明されている。それは、「人間がいなくても作業が進むようにしようよ」ということだ。 続きを読む

笑いの現場―ひょうきん族前夜からM-1まで

笑いの現場―ひょうきん族前夜からM‐1まで (角川SSC新書) この本を手にとってみようと思ったのは、舞台『悩み多き者よ』を見たからだった。ラサール石井さんプロデュースのその公演は、たまたま人間ドックで同席した中年男3人が、互いが同級生(同い年)だと知ったことから交友を深める様子を描く。
理屈屋がいて、愛人を持つ人がいて、世話好きがいて。
それぞれに個性がありつつ、ときに意気投合し、ときにぶつかりあい、やがて青春時代にはまったフォークソングのコンサートを一緒に開催する。
笑いとペーソスにあふれた舞台。
舞台そのものは、楽しい芝居だったという感想にすぎない(もちろん、それはすごいことなんだけど)。
観終えた後、それをプロデュースしたラサール石井さんの視線が、心に残った。
自らの年月と重ね、ときに茶化し、ときに批評も交えて舞台にする。なんていうのだろう、それがすごくクールなことだと思えたのだ。
自らを客観視してこそ可能な、プロデュース。
彼が、笑いを分析している。本書を見かけたとき、あの舞台を通して感じた客観的な視点を思い出した。 続きを読む

イスラームの人間観・世界観―宗教思想の深淵へ

イスラームの人間観・世界観―宗教思想の深淵へ 文明の対立、あるいは文明の衝突といわれる。最近では文明の対話とも。端的にはそれは、キリスト文明とイスラム文明の対立、あるいは対話を意味している。
分かりやすい構図だ。キリスト文明とイスラム文明は違う。宗教思想が違う。だから対立する。対話しなくてはいけない。
ただ、分かりやすさは危険だ。
分かった気になって、そこで思考停止してしまう。
違うから対立する。
なるほど。
でも、それってどこまで自明なのだ? 続きを読む

明日の広告―変化した消費者とコミュニケーションする方法

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) もう10年以上前だったろうか、一緒にセールス・プロモーション関連の仕事をしていた友人たちと、「広告って、恋文だよねぇ」なんて言っていた。
ひとりの後輩が、なにかの講演会で、プロモーション手法を恋の手ほどきに例えて説明し、それを評してもうひとりの後輩が、「あれ、お前の実感がこもっていてわかりやすかった」と誉めていた。
そんなことを思い出したのは、第1章がいきなり「消費者へのラブレターの渡し方」だったから。
ああ、これは正しい立ち位置で、ほんとうのことを書いている本だと、章題をみながら感じたのだった。 続きを読む

暴走する「世間」―世間のオキテを解析する

暴走する「世間」―世間のオキテを解析する (木星叢書) おもしろい。非常に刺激的。
世間学については、以前にも『世間学への招待』などで触れて、その着想を新鮮に感じていた。こちらも入門書としておもしろく、お薦めだ。
それで。
ぼく自身は「世間」が日本を読み解くために有効な枠組みであると感じる一方で、現代においてそれは、どちらかというと退潮しつつあるものと考えていた。世間を形作っている(とぼくが考えていた)コミュニティが薄れているからだ。
しかし。 続きを読む

親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ

親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR) 介護の社会化が進められている。
それはたとえば、介護保険制度を導入し、介護士などによるケアができる体制を整えることを意味している。つまり社会化とは、介護や育児といった、これまでは家庭内で担われてきた役割を家族から切り離し、社会としてめんどうをみようということだ。
同じようなことを、専門用語で「脱埋め込み」と言う。 続きを読む

地域切り捨て―生きていけない現実

地域切り捨て―生きていけない現実 力作。
学術的な冷静な視点と、ジャーナリストによる現場の熱い空気が、よい混合をみせている。地域問題を考える人は必読。
ここには、数多くの「生きていけない現実」がある。
現実に押しつぶされるような感覚というのは、こういう感覚を言うのだろうか。
しかし本書は、その現実に対して、ただ苦しいと報告するだけではない。
ひとつの統一した視点のもとで、この現実を招いた構造を照らし出す。 続きを読む

子どもの脳と仮想世界―教室から見えるデジタルっ子の今

子どもの脳と仮想世界―教室から見えるデジタルっ子の今 教室から見える、とあるように、著者の戸塚さんは長年教育の現場で子どもたちに接してきた教師であり、ITを利用した授業でも先進的な取り組みをしてきた人。
その経験をふまえた印象的なエピソードが第四章に描かれている。
それは、マコたんの話。 続きを読む

日本人の意識と行動―日本版総合的社会調査JGSSによる分析

日本人の意識と行動―日本版総合的社会調査JGSSによる分析 日本版総合的社会調査(JGSS)というのは、2000年から行われている調査。
世帯構成や職業などのほか、政治意識や人生観、友人関係にいたるまで、多岐にわたる項目について尋ねる、ものすごい内容だ。サンプル数はおよそ5000で、6割くらいの回収率という。
調査結果は、実施から1年半後をめどに、個票ベースまで公開される。これを活用すれば、印象ではなくデータに基づいた論考が可能なのである(詳しくは「JGSSサイト」参照)。
本書は、その2000年から2003年までの結果をもとに、さまざまなテーマについて「日本人の意識と行動」を明らかにしたもの。 続きを読む

地域再生システム論―「現場からの政策決定」時代へ

地域再生システム論―「現場からの政策決定」時代へ 現場からの政策決定。
本書では、端的にはそれは「構造特区制度」を意味している。地域の主体から提案を受けつけ、それらは「価値がある」ものという前提に立ち、できない理由ではなく実現する方法を探るという基本で行われ、審査情報も公開していく。
その特区制度の特徴や、今後のあり方を探ったのが本書だ。 続きを読む

<私たち>の場所―消費社会から市民社会をとりもどす

“私たち”の場所―消費社会から市民社会をとりもどす 副題には、消費社会によって市民社会が奪われてしまったという含意がある。その思いが今の自分にすごくフィットしていたのが、本書を手にした理由。
市民社会、それは「あなたと私」の相互関係を調整する空間。国家でも市場でもない「第三の領域」だと、バーバーはいう。
彼は市民社会を三つの型に分類する。リバタリアンのモデルとコミュニタリアンのモデル、そして強靭な民主主義のモデルだ。バーバーが目指すのはこうち最後の型。 続きを読む

地域づくりの新潮流―スローシティ/アグリツーリズモ/ネットワーク

地域づくりの新潮流―スローシティ/アグリツーリズモ/ネットワーク 副題に並ぶ3つのキーワード。いずれも気になるテーマである。
まずはおさらいしておこう。スローシティ。この母体はご存知「スローフード運動」だ。スローフード運動は、1986年にマクドナルドがローマのスペイン広場に進出するという計画を聞いたイタリアのジャーナリスト、カルロ・ペトリーニらが、これを阻止する運動を始めたのがきっかけ。
スローシティは、やはりイタリアで生まれ「チッタズロー」と呼ばれるものだが、1998年にスローフード協会年次集会に同席したブラ市、グレーベ・イン・キアンティ市、オルビエト市、ポジターノ市の四市長が意気投合して、スローフードの精神をまちづくりに適用しようと始めたもの。現在では世界中で50を超える都市がスローシティとして認証されているという。 続きを読む

連帯と承認―グローバル化と個人化の中の福祉国家

連帯と承認―グローバル化と個人化のなかの福祉国家 日本はどこに行こうとしているのだろう。グローバル化、個人化を前提とした改革が進められた後、格差の解消が言われる現在は、あるいは福祉国家であろうとしているのか。そんな思いから、これはまさに副題にひかれて手にした本だ。
福祉国家という言葉を、精密に理解していたわけではない。本書を通じて、あらためてその概念を整理していった。たとえば、福祉国家は、まず国家目標として存在すること。そしてその手段として、給付国家としての側面と、規制国家としての側面があること。 続きを読む

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